John Boydに関する邦文の文献等はほとんど出ていません。
Boyd自身が殆ど文献を残さなかった上に、殆どの広報行動をスライドによるプレゼンテーションで行なったからだと思われます。スライドを見ても一部はわかるのですがその思索を追うには不完全だと思われます。動画も残っていますが、膨大なものであり、かつ不鮮明で聞き取りにくく、研究に使用するには少しハードルが高いと思われます。
その中で英文で参考になる資料をまず書いておこうかと思います。
1. 「Boyd」 Robert Coram著
いわばJohn Boydの伝記といったポジションで、面白く読めます。
生い立ちからの彼の生き方、性格、逸話などを読むのには都合が良いと思います。
2. 「Mind of War」 Graham Hammond 著
主にJohn Boydの生誕を折った後で彼の戦略論について、実際に追った書籍です。
3. 「Science, Strategy and War: The strategic Theory of John Boyd」 P. B. Osinga
https://www.amazon.co.jp/Science-Strategy-War-Strategic-History/dp/0415459524
個人的に一番お勧めの書籍。彼の思索の系譜を追った一番の著作では無いかと思っています。著者はオランダ空軍でBoydの息子たるF-16に乗ったオランダ空軍士官。現在はペンタゴンでアナリストをしている様です。Boydの思索の系譜の幅広さ、彼の空軍を終わって以降の思索の系譜をサイエンス、歴史的な戦略論の系譜を追い、Boydが各種プレゼンテーションを行った題材のバックグラウンドと文章による各プレゼンテーションの再現を行っています。
4. Chet Richerds氏の個人サイト「Slightly east of new」より、文献リンク
ほぼフリーの文献が入手できます。Boydの膨大なスライド類をここで入手できます。
Chet Richerds氏はJohn Boyd氏の部下にあたり、かつては秘書的な仕事もしていた様です。
現在はJ. Addams & Partner Inc(http://www.jaddams.com)にてコンサルティング業務を行なっている様です。またOODAループ論とJohn Boydの理論をビジネス界に紹介した「Certain to Win」という本を書いています。
5. Defense and The National Interest サイト
http://dnipogo.org/john-r-boyd/
ボイドのスライドはここからもほぼ全て入手できます。
5. 邦文サイト。夕撃旅団 http://majo44.sakura.ne.jp
ここは外せません。ここのF22への道 (http://majo44.sakura.ne.jp/planes/F22/top.html)は非常にボリュームがありますが、一応全てを精読される事をお勧めします。話は広範囲になりますが、読み物として非常に面白い。個人的には各種、和文で出ているOODA Loopの解説よりも、ここの文章の方が遥かに面白く、為になります。
6. アメリカ海兵隊のドクトリン 北村淳、愛子 訳
https://www.amazon.co.jp/アメリカ海兵隊のドクトリン-北村-淳/dp/4829504447
ボイドの弟子たち、アメリカ海兵隊のドクトリン(世界の陸軍界に衝撃を与えたMCI-1)の邦訳です。絶版になっており、中古でしか入手できませんが、お勧めです。
なお、OODA LOOPの詳細説明等について北村先生は原稿を用意している様子ですが、未だ出版はされていない様です。続巻を待たれます。
世の中で邦文でOODA LOOPを扱っている書籍は端折ったり、間違いがある事が多く、英文の書籍、文章を当たる必要があると思っています。特にアメリカの海兵隊、陸軍の研究書類に、多くの良著、良文が存在します。ご興味のある方はGoogleを駆使して丹念に追っていく事をお勧めします。
田中広樹